横浜でクリスマスイブにバラを100本抱えて待ちぼうけした話 

 

199◯年12月24日クリスマスイブ

わたしはひとり赤いバラ100本を抱え、

横浜駅近くに立っていた

 

話は遡ること、その日のお昼

わたしは某チキンのお店でアルバイトをしていた

クリスマスのこの2日間は通常の売上の10倍以上

を叩き出す超忙しいときであり厨房もこの2日間

ばかりは全バイト総集合で早朝から閉店間近まで

フル稼働でお祭り状態であった

そんな忙しいさなか、店長に呼ばれた

 

なんだよ、この忙しいときにって20代後半ぐらい

の店長のところに向かうと

アルバイトをしないかと突然いわれた

 

は、今してますけど?

 

事情がわからないわたしに店長は説明する

 

19時に閉店する横浜駅近くにある花屋でバラを

引き取り、自分は車で遅れて迎えにいくから合流

して店まで戻ろうという内容だった

 

一万円の報酬、年末の軍資金ニヤリ!ってわけで

わたしは今、駅近くにバラを持って立っている

 

しかし待てども待てども、店長はやってこない

当時ですから携帯も何もなく連絡手段がない!

手帳もないから店の番号なんかもわからない!

 

もうかれこれ30分はたったころだろうか

流石に周りの視線が痛くなってきた!

これってもしかして…

私、彼女にすっぽかされてる男?

そう思うと、

もう早くこの場から立ち去りたいんですけど

帰ってチキンつくんなきゃいけないんですけど

と、どうしようかと思案する

今、ここから立ち去ったらあきらめた男に見えは

しないだろうか?

なぜ、私はこんなことで見栄をはらなければ

ならないんだと怒りに耐えていると

 

あの、大丈夫ですか?

 

半笑いなのが気になるが、今はそんなことはいい

あぁ! 女神よ、よくぞ声をかけてくださった!

この私に今のこの状況を、この場のみなさんに

説明させていただける機会をいただいたこと、

感謝します、サンタマリア!!!

 

そしてことの顛末をやや大きな声とアクションで

説明し、ひどいよねと言いながらバラを周りに

いた人たちに何本かプレゼント!

本気にしてくれたかどうかわからないけど

これから恋人と会うであろう、

そのちょっとニヤついた女神さま、

こんな男がこんな言い訳してたよ、ダサッ!!

ってどうせ話のネタにするんだろ!

いいさ、それでも私が助かったのは事実だ

 

結局、店長は目当てのバイトの子が体調不良で

接客業務を交代して来られなかったとのこと

 

私はその後、もう電車で帰ることにして

東横線の中でまたみんなの視線を集めてしまう

のだった

 

一応、その子にバラは渡せたようなのだが、

 

おい、店長!!

そいつ、本当に体調不良か?

あと100本のバラのこと、自慢話にしてたけど

それ、80本ぐらいだぜ!!